歯周病は歯を失う原因第1位
歯周病は、日本人の歯を失う原因第1位の病気です。初期段階では自覚症状がほとんどないため、気づいたときには大きく進行しているケースが少なくありません。歯周病は、日々の食事や歯磨きの問題などが関与しているため、これらを見直すことでリスクを軽減できます。
歯周病の細菌検査でリスクに応じた予防・治療
歯周病は歯周組織の細菌感染によって起こるため、歯周病の原因菌である細菌検査を行い、歯周病の有無やリスクを調べています。
よくある歯周病検査では歯周ポケットの深さや歯周組織の破壊状態を簡易的に調べることが通常ですが、当院では細菌検査にて、病原性の強い細菌種や細菌数を調べて、歯周病のリスクと現在の状況について正確に把握していきます。
そのうえでどのような治療法がいいか、治療後の予防方法などをご提案させていただき、歯周病の治療から歯周病の予防まで行っています。
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歯周病検査で把握できる細菌
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- Porphynomonas gingivalis(P.g菌)
- Treponema denticola(T.d菌)
- Tannerella forsythensis(T.f菌)
- Actinobacillus actinomycetemcomitans(A.a菌)
- Prevotella intermedia(P.i菌)
歯周病のセルフチェック
下記のうち1つでも当てはまる場合は、歯茎にだけ症状が起きている歯肉炎の段階の可能性があります。3つ以上当てはまる場合は、歯を支える歯槽骨にまで炎症が起きている歯周病の可能性が高いでしょう。
- 起床後に口の中がねばつく
- 歯茎の痛み、かゆみ
- 歯茎の腫れ
- 口臭が強くなった
- 歯が長くなったような気がする
- 歯が揺れる
- 歯の周りに歯垢が溜まっている
上記の症状に当てはまる場合は、なるべく早く歯科医院を受診しましょう。早期発見できれば歯磨きとメンテナンスだけで改善出来る可能性があります。
歯周病の進行度と治療法
歯肉炎
歯肉炎は歯周病の前段階です。自覚症状がほとんどないため、気づかずに放置してしまうこともあります。歯肉炎の症状は次のとおりです。
- 歯茎が赤く腫れる
- 歯茎の先端が膨れる
- 歯磨きのときに歯茎から出血する
- 硬いものを噛むと歯茎から出血する
軽度歯周炎
軽度歯周炎は、歯周ポケット(歯と歯茎の間の溝)が3mm以上の状態です。歯周病菌が出す毒素によって歯周ポケットが深くなり、そこに歯垢や歯石が蓄積することで、ますます歯周病を悪化させてしまいます。
治療では、歯磨き指導や歯石除去、歯周ポケット内の歯垢・歯石の除去を行います。症状は次のとおりです。
- 歯茎からの出血
- 歯茎の腫れ
- 歯茎が浮いているように感じる
中等度歯周炎
中等度歯周炎は、歯を支える歯槽骨が半分程度溶かされた状態です。自宅でのケアだけではなく、歯科医院で歯周ポケット内の歯垢・歯石を除去しなければ改善が難しいでしょう。主な症状は次のとおりです。
- 歯茎の腫れが改善と悪化を繰り返す
- 冷たいものがしみる
- 歯が揺れる
- 口臭が強くなる
- 歯茎から膿みが出る
重度歯周炎
重度歯周炎は、歯茎の3分の2以上が溶けた状態です。歯槽骨の大部分が溶かされることで歯が大きく揺れるようになり、放置すると自然に抜け落ちます。歯の根に付着した歯垢・歯石を歯茎を切開して目視で除去する外科治療が必要です。それでも改善がみられない場合は抜歯します。次のような症状が現れた場合は、重度歯周炎に進行している可能性があります。
- 歯が揺れる
- 強い口臭
- 硬いものが噛みづらい
- 歯磨き時の歯茎からの出血
- 歯茎から膿が出る
- 歯が長くなったように感じる
- 歯と歯のすき間が広くなった
歯周病は全身の健康に悪影響を及ぼします
歯周ポケット内に存在する無数の細菌は、歯茎の炎症が起きたところから体内に侵入する場合があります。そうして血流によって全身へとまわり、各臓器に定着することでさまざまな病気を引き起こすことがあるのです。
例えば、心筋梗塞や動脈硬化、糖尿病、早産・低体重児出産などとの関連が指摘されています。特に、細菌に対する抵抗力が低い高齢者は、歯周病が結果として全身の健康を脅かすことがあるため注意が必要です。
歯周内科治療
歯周内科治療とは、歯周病の原因菌を薬で退治し、歯周病を治療する方法のことです。まずは、歯周病の原因となっている細菌を特定するために、顕微鏡でお口の中を観察する必要があります。
歯周外科治療
歯周ポケット掻爬術(ししゅうぽけっとそうはじゅつ)
歯周ポケット掻爬術(ししゅうぽけっとそうはじゅつ)は、歯周ポケット内の歯垢・歯石を徹底的に除去する施術です。スケーリングとルートプレーニングと呼ばれる施術を行います。歯垢・歯石を徹底的に取り除くことで、歯の根と歯茎がしっかりと繋がるようになり、歯茎が引き締まります。
歯肉剥離掻爬手術(フラップ手術)
歯肉剥離掻爬手術(フラップ手術)は、歯根に張り付いた歯石を除去する外科治療です。歯茎を切開して歯根を露出させ、目視で歯石を除去し、歯茎を縫合します。約1週間後に抜歯すれば治療は完了です。
マイクロサージェリー(手術用顕微鏡を用いた手術)
マイクロサージェリーとは、手術用顕微鏡を用いて歯茎を切開する治療法です。
手術用の顕微鏡を用いることで、可能な限り手術部位を小さくし、また歯の根の形は複雑なため細菌の塊(歯石)を取り残すことなく手術を行う術式です。
高度な技術ですが、マイクロスコープを使用することで、術後の回復を早め、負担を抑えつつ成功率を高めることができます。
エムドゲイン療法
エムドゲイン療法とは、歯周病によって破壊された歯茎や骨の回復を促す薬を塗る再生療法です。歯茎が再生すれば、歯を支える機能が回復することで抜歯を回避できるうえに、歯周組織の見た目も改善します。豚の歯胚から抽出したエナメル基質タンパク質を使用しており、人体に害が及ぶ心配はありません。
リグロス歯周組織再生療法
リグロス歯周組織再生療法は、骨の再生を促す薬を塗ることで、歯周組織を回復させる治療法です。薬剤にはbFGFというヒトの成長因子を使用します。2016年から保険適用が開始され、低費用で受けていただけるようになりました。